2009年03月12日

伊織と俺のプロデュース−Epilogue

チン


エレベーターの扉が開く。俺と伊織がエレベーターを出ると扉が閉じる。上がっていくエレベーターの表示が三階になった辺りで、ビルの地下駐車場に盛大な溜息が響く。

「って、何よ情けないわね」
「いや、今回ばかりは疲れたよ」
「私は楽しかったわよ」
「……昨日は泣きそうな顔してたくせに」
「何か言った?」
「いや、別に」

実際疲れた。なにせこのお膳立てをするのに、丸一日しか時間がなかったのだ。各方面に相当の無理をお願いして、あちこちで横車を押しまくった。机に積まれた請求書を律子に提出するのが恐ろしい。救いだったのはあの監督がノリノリだった事で、自らスタジオを借りて一日であのトレーラーを完成させてくれた。しかも「素材撮り」をしたいからと報道陣に紛れ込んだのは彼の発案だったりする。

「もっと胸を張りなさい。アンタそれだけのことはしたのよ?」
「それだけのことって?」
「アンタ、スキャンダルをプロデュースに変えたんじゃない」
「そりゃ、仕事だからな」
「私のためにでしょ?」
「俺にだってプロデューサーとしての野心はあるよ」
「私を応援したいんでしょ?」

伊織に悪戯っぽくのぞき込まれ、俺は思わず顔を背ける。正直に言えばお膳立てに没頭している間、そんな伊織への気持ちを忘れていた。だから罪悪感はあるし、すなおにうんと頷けない。視線を感じて、ちらりと目線だけもどす。

伊織はにっこり笑ってくれた。

疲れが吹き飛ぶ。この笑顔があれば、俺はやっていけるだろう。

「俺は伊織のプロデューサーだからな」
「次も頼むわよ」
「ああ、任せろ」

穏やかな空気が二人の間を満たす。俺達はしばし見つめ合





〜♪



全く空気の読めない携帯だ。
だが今回なっているのは俺のではなく、伊織がしぶしぶ携帯を取り出す。
電話に出た伊織の顔が厳しくなっていく。様子がおかしい。

「ど、どうしたのやよい!? 落ち着いて話して」
そのうち俺の携帯にも呼び出しがかかった。嫌な予感に急き立てられ、俺は電話に出る。
『プロデューサーさん!? 急いで帰社してください!』
「どうしたんですか小鳥さん」
『それが……』


「「美希が移籍!?」」



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posted by tlo at 22:52| ○○の仕事風